こんにちは、歯科衛生士の秋吉です。前回歯周病菌についてお話しました。今回はその歯周病菌が全身に及ぼす影響についてお伝えします。

歯周病はお口の中だけの病気だと思われがちですが、全身に悪影響をもたらす原因にもなっているのです。では、どのようにして影響を及ぼすのか、それは血液です。普通の菌は血液に触れると白血球などの働きで殺菌されて血液中では生きられません。しかし、歯周病菌は血液とほぼ同じ成分の歯肉溝液の中で生存しているため、血液の中でも殺菌されずしばらくは生き延びることが出来ます。お口の中で歯周病が進行し、歯ぐきが炎症を起こすことによって出血した血液中に菌が入り込み、全身に悪影響を与えているのです。

歯周病の影響

血液の流れに乗って、全身に駆け巡った歯周病菌によっておこる疾患はどのようなものがあるのでしょうか。それぞれの病気との関連を見てみましょう。

 

1.誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って肺や気管に飲み込んでしまって発症する肺炎です。肺や気管は咳をすることで異物が入らないように守ることが出来ますが、高齢になるとこの機能が低下してしまうため食べ物と一緒にお口の中の細菌を飲み込み、細菌が気管から肺に入ってしまうことがあります。

その結果、免疫力が低下した高齢者は誤嚥性肺炎を発症してしまいます。

誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌と言われ、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが大切になります。

2.脳梗塞

脳梗塞とは、脳卒中の一つで、頭の中の血管が詰まることで生じる疾患です。突発発症して初期症状として顔がゆがむ、片腕、片足が動きづらくなる、歩きにくくなる、ろれつが回らなくなる、などの症状があります。これらの症状を放置しておくと麻痺や感覚障害など生活に支障をきたす後遺症が残ることもあります。

歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。

また、脳の壊死した部位によって色々な障害が起こります。

・手足の運動障害　→　筋肉の緊張で手足が上手く動かせないことによって、歯ブラシをしっかり握って歯を磨くことが難しくなり、汚れが上手く落とせず、歯周病になりやすくなります。

・嚥下障害　→　食べ物が上手く飲み込めなくなることで、栄養不足や免疫力の低下を招き歯周病になりやすくなります。

・唇、舌の運動障害　→　唇や舌に麻痺が出ると、うがいが上手く出来なくなりお口の中に汚れが残ってしまいます。その結果、歯周病になりやすくなります。

3.糖尿病

糖尿病とは、食べ物から分解された糖分が体内に吸収されにくくなり血液中に糖分が溜まってしまう状態が続く病気です。高血糖の状態が続くと様々な合併症を引き起こしてしまいます。歯周病も糖尿病と深い関連性があり、糖尿病の合併症と言われています。また、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯周病にかかる確率が２倍以上なると言われています。

歯周病と糖尿病はお互いに悪影響を及ぼします。

歯周病で歯ぐきの炎症反応があると、炎症部位から血液中に歯周病菌が入り込みインスリン分泌の機能を阻害し、糖尿病に悪影響を与えます。

また、糖尿病で血糖値のコントロールが良くないと感染に対する抵抗力が弱く、口腔内の細菌が増殖しやすくなり感染症の一つである歯周病に悪影響を与えます。

4.心疾患（心筋梗塞・狭心症）

動脈硬化によって心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがったりすることで心筋に血液が巡らなくなり死に至ることもある病気です。原因として食生活や運動不足、ストレスや生活習慣などが挙げられますが、その他の原因として歯周病菌による細菌感染が考えられます。

歯周病菌などの刺激によって、血管内に沈着物が出来てしまい血液の通り道が狭くなります。その沈着物が剥がれ落ち血栓となり、血管が詰まってしまいます。

以上のようにお口の中の状態は全身に色々な影響を与えています。しかし、歯周病を予防することができれば全身疾患を引き起こすリスクを減らすことが出来るのです。身体に何か病気や気になる事があるとき、自分のお口の中はどうなっているのか注視してみてください。

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